猫を抱いて象と泳ぐ/小川洋子



 傑作チェス小説。
 主人公の少年がチェスに出会い、そこから物語は動き始める。リトルアリョーヒンと呼ばれることになる彼の数奇な人生の物語。

 モチーフはチェスだが、囲碁にも通じるボードゲームの魅力が存分に描かれている。対局するとは何か。一枚の棋譜の持つ意味。1局の対局に人生が投影されるような錯覚。めくるめくチェスの世界。物語として充分面白いが、もし読者がチェスや将棋や囲碁などを嗜んでいれば、読後にすぐにゲームをしたくなるような、そんな本です。
 作者の小川洋子さんは、チェスはほとんど指さないようです。相当な取材を下にしても、チェス(ボードゲーム)の持つ魅力をここまで見事に洞察しえるのは作家としての感性・眼力のなせる技でしょうか。

【参考】
 この作品の重要なモチーフに18世紀に発明された「トルコ人」というチェス人形の話があります。実際に世界各地でチェスを指したこのチェス人形については、ポーが"Maelzel's Chess-Player"というエッセーを残しており、この人形が機械ではなく、中に人間が入ってチェスを指しており、どのような手順で隠れたら観衆の目をごまかせるかということまで正確に推理しています。また、このエッセーを学生時代に大岡昇平とともに訳して小遣い稼ぎをした小林秀雄が、「常識」(考えるヒント収録)でこの話題に触れています。



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チェス

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