わが天才棋士井山裕太/石井邦生



集英社
囲碁ファン ☆☆☆☆

 名人獲得直前に出版するという、ものすごいタイミングではなたれた強打の一冊。

 名人を最年少で獲得して注目されている天才棋士井山裕太のあゆみを、師匠石井邦生九段が振り返った一冊。巻末に井山裕太九段とほったゆみの対談も収録されている。井山裕太のこれまでの主要な棋譜も解説付きで収録されているので、井山裕太の囲碁そのものに興味ある人も注目である。

 井山裕太少年との出会い、インターネットを使った異例の指導方法、入段やタイトル獲得までの軌跡などが語られている。自ら親ばかならぬ師匠ばかと称するが、その通りかもしれないと納得できてしまう部分もある。読んだ後に心温まる一冊である。

 石井九段のスタンスは、何かを教えるというよりも見守るという要素が大きいように見えるが、案外教えるということはそういうことなのかもしれないと考えさせられた。指導者が何かを教えたという自己満足のための指導に陥るのは禁物だし、「見守る」ということは見た目以上に労力のいることだ。

 また入段碁の指導碁(互先)では負けがこみ、ついに20連敗するという挿話があるのだが、そこまで負けが込んでも対局を止めなかった根性に驚いた。優しい師匠のすさまじい気迫を感じるエピソードである。棋士はどんな状態でも対局からは逃げられない、逃げてはいけないということを身をもって示したのかも知れない。
  
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本・雑誌
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棋書書評

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