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決定力を鍛える/ガルリ・カスパロフ



NHK出版
☆☆☆☆☆

 日本ではチェスは盛んではないため、カスパロフはIBMのスーパーコンピューター、ディープブルーに負けた世界チャンピオン(機械に負けた人間)として認知されているむきもある。しかし彼はまぎれもなく歴代世界チャンピオンの中でも最高レベルのプレイヤーで評価は非常に高い。例えばヨーロッパのチェス雑誌などで羽生善治名人を紹介するときは「ショーギ界のカスパロフ」といった表現が使われたりする。この本はカスパロフ版『決断力』といったところ。しかしその充実度は段違いである。

 原題が How Life Imitates Chess で、訳題よりこちらのほうがよいと思う。
 この本はカスパロフが、自らの思考のプロセスを細かく分析している。素人は名人に「何手読めるんですか?」などと質問しがちだが、思考というものはそんなに単純でない。一般的には手を「読む」ことを考えることのすべてだと簡略化しがちだが、「戦略」や「戦術」、現状「分析」といったものがあってはじめて目標が定まり、手を読むことができる。また手を読んでも読み切れる(答えが出る)場合ばかりではないので、出来た図を「判断」し、どの手を指すか「決断」しなければならない。また現実の勝負は時間制限のなかで行われており、時間の管理や事前の準備も大切だ。またコンピュータープログラムが発達し、情報化した現代ではそれらの技術の利用の仕方でも差が出る。考えるということは実にさまざまなプロセス経て行われ、また様々な側面があるわけで、それらについてカスパロフは詳細な検討を加えており、圧巻である。また実例として彼の繰り広げた名勝負のエピソードなどが語られるが、その描写が非常に生き生きとしていて面白い。また話題はチェスの盤上から離れて、航空会社のボーイング社に飛んでみたりチャーチルに触れてみたりと、カスパロフの興味の広さには驚かされる。
 また、各章の間にチェス界の歴代名選手の紹介コラムが挿入されており、これがよくまとまっており面白い。

 考える、ということをチェスを通して検討しつくしたとき、それは結局どう生きるのかという問いになる。読み終えるとHow Life Imitates Chessというタイトルに納得できる。

 最後に補足。『「決断力』がこの本ほど充実していないと評したことに関して。カスパロフはこの本の執筆は引退して初めて可能になったとと言っている。現役時代から構想があったが、競技をしながらこのような本は書けないのだという。カスパロフ本を読むと、確かに羽生本には忙しいなかでまとめた限界があるようにみえる。あるのはその差だけであり、羽生本の内容自体はは極めて興味深い。
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チェス

詰碁が強くなる死活力/李昌鎬



棋苑図書/
上級以上 ☆☆☆★

 よい基本死活の問題集である。ことさらに「李昌鎬の」と謳っているが、いたって基本的な内容である。そして基本書としてはよい内容だと思う。

 サイズがコンパクトで図が大きく見やすいので、個人的にはすごくすきなデザインである。基本死活やシンプル詰碁集はどれが一番いい内容などとはなかなか断定できるもの絵はない。上達のためにはそれらのなかで気に入ったものを飽きるまで繰り返すことが大事で、この1冊もそういう使い方をすれば効果的なものだ。飽きたらまた新しいものを買ってみればいい。本との相性は個人差があるので、この本も、書店などで実際手にとってみるとよいと思う。何となく解いてみたいと思えれば、上達を助けてくれる一冊になるだろう。

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詰碁集

イ・チャンホのハメ手対策/李昌鎬




東京創元社
上級以上/☆☆☆★

 「イ・チャンホの」ということではなく、普通のハメ手本である。特に奇抜な新ハメ手が紹介されているわけでも、新しい対策が紹介されているわけでもなく、既存のハメ手本と内容はかわらない。もちろん普通のハメ手本としては、構成もよく読みやすいと思われるのでお薦めである。すでにハメ手本を持っている人はあえて買う価値があるかは微妙なところ。

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定石

アマが使える 世界の新戦法/邱峻



自由国民社/
有段者 ☆☆☆☆

 中国国内タイトル名人を獲得したこともある邱峻八段による流行戦法解説。新手がすたれるサイクルの早い今日ではすでに古い気配さえあるが、実戦使用可能は面白い手段が多く有意義だろう。新でなくとも戦法として完成度の高いものが多い。
 級位者でもやさしく覚えられる、は誇大広告な気がするが、丁寧に説明されているのは間違いない。所謂ハマリ図もしっかり紹介してゆくので、ある程度のレベルの人だと多少まどろっこしいかもしれない。

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布石

石の形の崩し方・整え方/山田規三生



毎日コミュニケーションズ/内藤由起子
上級以上 ☆☆☆☆

 現代版『活碁新評』みたいな内容。
 同じ手筋でも石を取る筋、連絡の筋、ヨセの筋などは多くの問題集があるが、案外形の手筋はおろそかになりがちである。ひとつには「形の良し悪し」というものが漠然とした感覚を含むので、正誤をつける問題にしにくいということもあるかもしれない。しかし石の形は重要で、形が崩れたら碁にならない。
 この問題集では基本的な石の形の崩し方(悪形の咎め方)や守りの急所が網羅されている。瞬間に急所が見えるようになるまで繰り返し読んでみたい本である。

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手筋

中国流布石だけで勝つ方法/小松英樹



毎日コミュニケーションズ/内藤由起子
上級以上 ☆☆☆★

 『中国流の徹底解明』の続編。内容は徹底解明に無い変化を補うもので、前作同様中国流ユーザーにとってはバイブルになりうる内容。
 しかし、この書名は何とかならないものか。徹底解明の続編とは思えないし、実際に中国流だけで勝つ方法を解説しているとは思えない。

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布石

秀栄の打碁集比較

 こんな表を作成してみた。
 秀栄の打碁集で主なものは、『日本囲碁体系 秀栄』(高川格)、『流水秀栄』(高木祥一)、『名人・名局選 秀栄』(福井正明)の3つである。以下の表は、この3つの比較である。
 ○印は解説棋譜、●印は棋譜(簡易解説)、◆はハイライトでの紹介である。◎は囲碁体系の巻頭の詳細解説という意である。

 なお、技術的な問題で、ものすごくスクロールしなければ見られないことをお詫びいたします・・・

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日付結果備考体系流水局選百名局
1866/1/19秀栄海老沢健造黒中押し勝ち2子


1866/3/14秀栄秀悦黒中押し勝ち2子


1869/8/23秀栄秀悦白中押し勝ち



1870/4/6秀栄伊藤松和ジゴ



1870/5/9秀栄伊藤松和黒7目勝ち



1870/5/25秀栄伊藤松和黒中押し勝ち



1871/0/0秀栄秀甫黒3目勝ち



1871/12/28算英亀三郎秀和秀栄黒2目勝ち



1872/5/25秀栄高崎泰策黒1目勝ち



1873/2/20泉秀節秀栄白4目勝ち



1876/4/8 秀栄小林鉄次郎黒3目勝ち



1876/8/22 秀栄中川亀三郎白2目勝ち


1876/12/28秀栄中川亀三郎黒1目勝ち



1877/1/6 秀栄藤田方策白9目勝ち



1877/6/16黒田俊節秀栄黒3目勝ち



1877/12/30秀栄中川亀三郎黒中押し勝ち



1878/7/19秀栄中村正平黒勝ち



1879/4/20秀栄秀甫黒5目勝ち



1879/5/11秀栄吉田半十郎黒6目勝ち



1879/5/25秀栄黒田俊節黒中押し勝ち



1879/5/29秀栄黒田俊節黒中押し勝ち



1879/6/8秀栄酒井安次郎黒3目勝ち



1879/7/20秀栄中川亀三郎黒中押し勝ち



1884/12/21秀栄秀甫黒中押し勝ち


1885/3/15秀栄秀甫黒3目勝ち



1885/4/12梅主長江秀栄白3目勝ち



1885/4/19秀栄秀甫白中押し勝ち



1885/6/21秀栄秀甫白2目勝ち



1886/2/11金玉均秀栄黒中押し勝ち6子


1886/8/6秀栄秀甫黒4目勝ち



1877/1/23秀栄小林鉄次郎黒中押し勝ち



1893/9/3小林鉄次郎秀栄黒1目勝ち


1893/4/8高橋杵三郎秀栄白3目勝ち


1895/11/17伊藤小太郎秀栄白中押し勝ち2子

1896/4/19 安井算英秀栄白中押し勝ち


1898/6/13安井算英秀栄白中押し勝ち



1898/12/8安井算英秀栄白中押し勝ち2子


1896/5/13石井千治秀栄白4目勝ち



1898/6/15石井千治秀栄白2目勝ち


1890/1/30都筑仙子秀栄白中押し勝ち2子


1890/6/3石井千治秀栄白中押し勝ち



1891/1/5中川亀三郎秀栄打掛け



1892/5/14林文子秀栄白中押し勝ち2子


1892/8/11田村保寿秀栄黒3目勝ち2子


1893/3/26巌崎健造秀栄打掛け



1895/12/15田村保寿秀栄白2目勝ち


1896/7/0石井千治秀栄白10目勝ち



1897/7/22安井算英秀栄白中押し勝ち



1898/6/15石井千治秀栄白中押し勝ち


1898/7/8安井算英秀栄白中押し勝ち



1898/10/16田村保寿秀栄ジゴ
1898/11/25安井算英秀栄白中押し勝ち2子


1899/12/10石井千治秀栄黒中押し勝ち2子


1900/04/01安井算英秀栄打掛け



1900/05/23雁金準一秀栄白中押し勝ち2子

1900/06/08雁金準一秀栄白8目勝ち



1900/06/23雁金準一秀栄白2目勝ち2子


1900/07/07岩佐秀栄白8目勝ち2子


1900/09/16広瀬平治郎秀栄白4目勝ち2子


1901/01/20田村保寿秀栄白中押し勝ち


1901/04/21大澤銀次郎秀栄白5目勝ち2子


1901/06/16広瀬平治郎秀栄白中押し勝ち2子


1902/01/19田村保寿秀栄白中押し勝ち


1903/02/15石井千治秀栄白中押し勝ち



1903/05/17伊藤小太郎秀栄白3目勝ち2子


1904/07/10田村保寿秀栄白1目勝ち

1904/08/23雁金準一秀栄黒中押し勝ち2子

1904/10/14長野敬次郎秀栄黒中押し勝ち



1904/10/15田村保寿秀栄白中押し勝ち



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打碁集

秀栄/高川格



高段者 ☆☆☆★
筑摩書房/村上明

 日本囲碁体系の第17巻。孤高の名人秀栄を解説するのは「流水不争先」の高川秀格名誉本因坊。
 秀栄は、秀策と並んで長く日本の碁の規範とされ、同時に神格化されてきた部分もある棋士である。高川九段の解説は、秀栄に対する深い敬意と棋風さながらの平明で筋道の通ったもので、秀栄の碁の魅力をよく伝えてくれるものだと思う。
 秀栄の打碁集としては基本のもので、外せない一冊。

参考:秀栄の打碁集比較

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明治大正(打碁集)

傑作詰碁事典/関山利一、利夫、利通



誠文堂新光社/山下智道
有段者 ☆☆☆☆★

 名著ながら手に入りにくくなっていた『傑作詰碁事典』が増補されて返って来た。
 もともと本書は、健康上の理由から早すぎる引退をせざるを得なかったタイトル制初代本因坊・関山利一(利仙)の残した膨大な詰碁群から、息子利夫九段がえりすぐりのものを1冊にまとめたものである。今回の改訂版はさらに問題数が増えている。初期のもには利夫九段の作品が含まれているのと同様、今回の改訂版には利道九段の作品もあるという。

 関山詰碁の特色はこくである。本書はC級のやさしいものから超A級の難解なものまで難易度はいろいろだが、共通しているのは「受けの妙手」の多さである。C級などでも「ああ、あの筋か、簡単だ」と安易にページをめくると、さらにもうひとひねりした解答図に出くわすということもしばしばである。より深く読むこと。安易に決めつけないこと。そのことを痛感させられる問題が多く、そこに悲劇の名棋士関山利一の囲碁への深い理解と愛情を感じる。事典なだけに高価だが、充分にその価値がある一冊である。

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詰碁集

名人・名局選 秀栄/福井正明


誠文堂新光社/相場一宏
有段者 ☆☆☆

 構成や評価については、他の「名人・名局選」とほぼ同じ。
 秀栄は「日本の碁」を考える上で非常に重要な棋士だ。先番必勝の秀策が黒番の規範となったのに対し、白のお手本とされたのが秀栄で、日本の碁の考え方の骨格になっている棋士である。全盛位にライバルと呼べる存在がおらず、勝負師としては不幸であったかもしれないが、その棋譜は演武を見ているようで、白番でも自然に勝ちを手にしてしまう。その芸術的な打ちまわしを堪能しよう。
 
参考:秀栄の打碁集比較

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category
明治大正(打碁集)

やさしいヨセ/牛窪義高



毎日コミュニケーションズ/
上級以上 ☆☆☆☆

 ヨセを「やさしく」丁寧に解説した好著で、ヨセはやさしいわけではないのに注意。
 15路盤のヨセ問題を22問収録している。手筋から、出入り計算、ヨセの性質(両先手、先手、逆ヨセ、後手)、手どまりの考え方まで、ヨセのすべてを網羅していると言っても過言ではない。解説は懇切丁寧でわかりやすいが、実際問題こういうものに取り組むのはかなりストイックなことかもしれない。目で解くのは疲れるという人は盤に並べればよいと思うが、15路盤は市販されておらずちょっと不便かもしれない。(例えばエクセルなどで簡単に作れるだろうが)
 好著だが案外読まれない本なのかなとも思う。

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ヨセ

中野詰碁/中野祥孝



誠文堂新光社/
有段者 ☆☆☆☆

 作者の中野氏は第17回全国高校囲碁選手権大会男子個人のチャンピオン。(その年は新潟代表同士の決勝戦だった)中野氏は高校卒業後、某名門大学に入学したものの、あまり学生碁界では活躍せず姿を消してしまった幻の強豪なので、どんな方なのか興味がある。
 硬派な詰碁集で、かなりの力作である。大柄な作品も多いが、形は実戦的で正統派詰碁である。(実戦でありえないような変態詰碁、奇形詰碁の類ではない)中にはプロの実戦を下敷きにしたものもあり、どの碁か調べてみるもの一興である。コラムなどなし、難易度も高めなので、純粋に詰碁が好きな人でないと楽しめないだろう。
 
category
詰碁集