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日本囲碁大系

 シリーズまとめ。
 古碁を集大成した名シリーズ。古碁ファンを自称するなら揃えたい。
 このシリーズは、解説者の選択もなかなかよくその点でも成功している。主な例を挙げれば道策を呉清源、知得を島村俊廣、丈和を藤沢秀行、秀栄を高川格などが棋風などに類似点があり面白い。

第1巻 算砂・道碩/岩本薫
第2巻 算悦・算知・道悦/趙治勲
第3巻 道策/呉清源
第4巻 道的・名人因碩/大平修三
第5巻 道知/坂田栄男
第6巻 察元・烈元・因叔/加藤正夫
第7巻 親仙得・大仙知/大竹英雄
第8巻 元丈/武宮正樹
第9巻 知得/島村俊廣
第10巻 丈和/藤沢秀行
第11巻 幻庵因碩/橋本宇太郎
第12巻 元美・俊哲・仙得/梶原武雄
第13巻 秀和/杉内雅男
第14巻 松和・雄蔵/橋本昌二
第15巻 秀策/石田芳夫
第16巻 秀甫/林海峰
第17巻 秀栄/高川格
第18巻 秀哉/榊原章二
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シリーズ

現代囲碁大系8・9 木谷實/小林光一

現代囲碁大系第8、9巻


講談社/相場一宏
高段者 ☆☆☆☆

 「大豪」木谷実九段の打碁集。弟子の小林光一九段の解説。
 木谷実九段は、呉清源九段との新布石提唱、名人引退碁、鎌倉十番碁など昭和初期の囲碁界の中心となった名棋士である。本因坊戦に三度挑戦して宿願を果たせず、悲運の棋士とも言われる。また後進の育成に力を入れ、大竹英雄、石田芳夫、加藤正夫、武宮正樹、小林光一、趙治勲などを育て、日本囲碁界黄金期の礎を築いた。
 木谷九段の碁は、打碁集、全集などで並べてこそ面白い棋士である。木谷九段は何度も棋風を変えたことで知られる。「怪童丸」と呼ばれた若手の頃は、定石や布石の常識などを無視した徹底的な力戦家。呉清源とともに新布石を提唱すると、今度は極端に位の高い中央志向の碁を打つようになった。新布石の流行が静まると、さらに一転して2線を這うような地に辛く堅牢な石立てと、中盤での強烈な打ち込みで相手を震え上がらせることになる。そして最終的には、均衡の取れた円熟の木谷流が完成する。上下巻50局を並べてその変遷を楽しみたい。

 小林光一九段の解説も、師に敬意をはらいつつも自分の見解もはっきり述べており分かりやすい。
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昭和(打碁集)

現代囲碁大系5 岩本薫/岩本薫

現代囲碁大系第5巻


講談社/高橋敬光
高段者 ☆☆☆

 岩本薫九段の打碁集。岩本九段の打碁集はあまりないので貴重である。
 岩本九段は、方円社の広瀬門下。修行時代は坊門と方円社の並立時代で、そこから日本棋院の成立を見ている。また戦中戦後の苦難の中、日本棋院の復興に尽力し、その棋歴は現代囲碁界成立と隆盛の歩みと同じくしている。原爆対局も含めて、激動の時代の囲碁界を支えた棋士の一人である。
 岩本九段の棋風はよく「豆まき碁」と言われる。それは白番で豆をまくように石をばら撒いて打つことからきているが、その軽妙にも見える打ち回しの裏には恐ろしい強力を秘めている。中終盤の強烈無比の寄り付きこそ本因坊薫和の面目躍如で、豆まきはその準備段階に過ぎない。
 岩本九段の青年期は長時間の持ち時間や時間無制限が当たり前の時代であり、江戸時代から続く四番手直りの打ち込み制度が残っていた。時代とともに選手権戦(本因坊戦など)の開始と相まって、コミ碁や持ち時間の短縮が図られた。そういう時代に育っただけに、岩本九段の棋譜はコミなし碁、時間無制限の碁の香りが強く残る。現代の古碁ともいうべき風格がある。現代の碁スピード感はないものの、ゆったりと練り上げられた布石と、一手もゆるがせにしない厳しい読みを秘めた中盤の石の運びは荘重である。ゆったりと並べたい一冊。
 
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昭和(打碁集)

基本布石事典【上下】/依田紀基


日本棋院/酒巻忠雄
上級者 ☆☆☆☆

 30年ぶりに内容を一新して出版された基本事典シリーズの第一弾。
 前回は(増補版も含め)林海峰九段監修であったが、今回は依田紀基九段が著者に。布石巧者と定評ある依田九段だけに的確な人選である。

 上巻が「星・小目の部」、下巻が「星、小目、その他の部」ということで、言葉で読むとなんだか分からない。しかし、索引その他を見ればそれなりの分類方法である。(「・」と「、」でニュアンスを変えているのだが、ちょっと分かりにくい)布石の分類は、述語などが確定していなかったり未成熟な部分があり、致し方ないか。
 各型4譜8ページほどで、比較的丁寧な解説がついている。全てではないが、そのあとさらに参考譜がつく。参考譜は127局収録されており、下巻には参考譜の索引もある。布石事典として内容は充実しているといえる。

 棋譜並べが苦手なひとは、本書の棋譜を並べるのがお薦め。手数も少なく並べやすく、解説つき。しかもある程度系統だって整理されているので知識を吸収するという意味では効率がよい。
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事典

明治・大正名棋家集一・二/榊原章二など

現代囲碁大系1巻、2巻


講談社/藤井正義(1巻)、中島宏二
高段者 ☆☆☆

 1巻は、本因坊秀哉、小岸壮二、中川亀三郎(石井千治)、広瀬平次郎、岩佐、2巻は雁金準一、高部道平、野沢竹朝、井上因碩(15世)、井上因碩(16世)、稲垣兼太郎、三宅一夫。

 まず1巻だが、秀哉に関しては、日本囲碁大系の『秀哉』があるので本書が必ずしもベストの打碁集ではない。注目は小岸壮二。秀哉の愛弟子で、壮二の夭折が無ければ秀哉が世襲制の本因坊を断念することも無かったといわれている。部類の長考派で、分厚い碁を打つ。本書にも収録されている瀬越憲作戦でのサルスベリを分断する大構想は圧巻。その外では秀哉の引き立て役に甘んじた力戦派石井千治などが面白い。
 2巻に関しては何と言っても雁金準一。師秀栄が「手が見えすぎる」と評したほど読みが深かった。接近戦の強靭さはすさまじく対呉清源戦などは驚嘆を禁じえない。秀哉との対立から本格的な手合を打つ機会が少なかった悲運の棋士でもある。その外「評の評」事件で有名な気骨の棋士野沢竹朝なども注目。

 秀哉、雁金以外はマイナー棋士といってよく、ややマニアックな巻である。
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明治大正(打碁集)

幻庵因碩/橋本宇太郎

日本囲碁大系11巻


筑摩書房/
志智嘉九郎
高段者 ☆☆☆★

 悲運の名棋士幻庵因碩の打碁集。解説は橋本宇太郎九段。
 幻庵は必ずしも勝負強い棋士ではないが、雄大な構想力と接近戦で見せる鋭い手筋で魅せてくれる。丈和に追いすがって繰り広げた死闘、名人の座を目指して秀和の先番に挑んだ争碁。手筋を駆使した見事な打ち回しは文句なしに面白い。
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古典(打碁集)

元美・俊哲・仙得/梶原武雄

日本囲碁大系12巻


筑摩書房/伊藤敬一
高段者 ☆☆☆

 博学のインテリ棋士で、準名人にまで進んだ林元美、知得仙知の実子で安井算知として天保四傑の一人に数えられた安井俊哲、同じく四傑で七段上手に進み御城碁も勤めた坂口仙得の巻。
 この巻の見所は梶原武雄が解説しているというところ。過去の名手が相手とあって遠慮がちながら、江戸碁と現代の碁(コミなし碁)の考え方の相違などがよくわかる。

 
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古典(打碁集)

親仙得・大仙知/大竹英雄

日本囲碁大系7巻


筑摩書房/
高段者 ☆☆☆

 外家坂口家の祖坂口仙徳(幕末の坂口仙得と区別するために親仙徳と呼ばれる)と、その実子で宗家安井家を継いで準名人にまでなった安井仙知(次の仙知と区別するため大仙知と呼ぶ)の巻。

 大仙知は偉大な棋士であり、異色の棋士である。本因坊察元によって活気を取り戻した碁界に技術面で新風を吹き込み、幕末の碁界隆盛への発火点となったのが大仙知の碁である。位が高く、深い読みに裏打ちされた豪放な打ち回しは、幕末に秀和秀策で完成を見る堅実な江戸碁とは一線を画すもので、そのオリジナリティは現代から見ても色あせない。大仙知の碁が、昭和の木谷実に影響を与えて「新布石」誕生の一因になったことは有名な話だ。 とにかく驚嘆の打ちまわしを見せてくれるので、一度並べてみることをお薦めする。
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古典(打碁集)

察元・烈元・因叔/加藤正夫

日本囲碁大系(第6巻)
 

筑摩書房/
高段者 ☆☆☆

 本因坊中興を果たした本因坊察元(名人)、その弟子で準名人にまで進んだ本因坊烈元、そして気骨の棋士服部因叔の碁を収録している。解説は加藤正夫九段。

 この巻の見所は、なんといっても因叔の碁である。
 察元は、碁界の衰微期からの転換点を作ったことで功績は大きいが、幕末の名手に比べればやはり落ちる。烈元にいたっては、安井仙知(仙角、大仙知)の引き立て役という感じで、あまりいいところがない。
 因叔は井上系の外家服部家の祖であり、若い時代は「鬼因徹」の異名を取った部類の力戦家である。その筋骨逞しく戦い抜く碁のたくましさは、中川亀三郎や秀哉などにも通じるところがある。また当時としては長寿を全うした人で、丈和などの後進とも対局しているが、その戦いぶりは歴戦の有の名に恥じないものだ。解説の加藤九段の棋風ともマッチしており、大変並べがいがある。
 因叔は名伯楽であり、因徹の名前を与え服部家の跡取りとした少年を、結局は宗家井上家に送り出す。それが後の幻庵因碩である。そういう意味でも因叔は重要な役割を果たしたといえるだろう。ちなみに幻庵の代わりに服部家を継がした雄節も七段上手にまで進んでいる。
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古典(打碁集)