Entry Navigation

置き去りの傷を探せ/日本棋院

置き去りの傷を探せ   

 級位者 ☆☆☆☆
日本棋院/川熊博行

 9路盤の実戦型の問題図が示され、その図の中に潜む二つの手を探し出す、という形式の問題集。詰碁、手筋の問題というのは、(問題として出題されている以上当たり前なのだが)絶対に手になるということが実は非常にヒントになってしまう。この問題手では、石が散らばっている中から問題を探し出さなくてはならない。ある部分を考えていても「もしかしたらここはいくら考えても無駄かも」という危惧があるのが非常に実戦的である。
 非常に即効性がある問題集なのでお薦めです。
スポンサーサイト
category
手筋

炎の勝負師坂田栄男/坂田栄男

炎の勝負師坂田栄男(第1巻)
炎の勝負師坂田栄男(第2巻)
炎の勝負師坂田栄男(第3巻)


高段者 ☆☆☆☆★
日本棋院/佐藤伸


 お手ごろ価格な上にすごい内容の打碁集にもかかわらず絶版。私は日本棋院の売店(当時1階)で在庫処分として売られていたものを購入。総本山で叩き売られていたのだから、さぞ売れなかったのだろう。
 「タイトル王」坂田栄男の主要な名局がほぼ網羅されている。並べてみれば分かるが、坂田栄男は恐ろしく強い。その棋譜は歴史上に高峰として聳え立っている。
 各巻30局程度を集録しているために、解説は簡素。できれば『坂田の碁』を購入して細かい解説を補充したい。あと、編集方針から(1冊の中では時系列に並んでいるが)3冊に時間的にはばらばらに集録されているために、全体像がつかみにくいという難点はある。
category
昭和(打碁集)

韓国囲碁年鑑2004/国際囲碁大学

韓国囲碁年鑑(2004)   

有段者 ☆☆☆☆

 2004年度版。まだ在庫はあるようだ。
 2002年版、2003年版に比べると棋譜の誤植は少なく、かなり並べやすくなった。今最先端を行く韓国棋士の棋譜が並べられるほか、国際棋戦の棋譜も充実しているので上達を目指す人必携の一冊といえるだろう。
category
年鑑(打碁集)

攻めの構図読みの力(上/下)/加藤正夫

加藤正夫打碁集(上巻)加藤正夫打碁集(下巻)


有段者 ☆☆☆★
大木書店/秋山賢司

 加藤正夫九段が生前に出した最後の打碁集。
 この本の特徴は、ハイライト図が先に提出されてちょっとした問題集としても楽しめることと、選局がこれまでの打碁集にないものを選んでいることが挙げられる。筆が春秋子ということもあって名人リーグからが多い。
 豪華本でちょっと手が出にくいが、内容の充実は保障する。
category
現代(打碁集)

囲碁百名局/高木祥一

囲碁百名局(上巻)囲碁百名局(下巻)


有段者 ☆☆☆★
誠文堂新光社/秋山賢司

 高木祥一九段精選の古今名局が楽しめる。歴史上の名勝負、名局はほとんど網羅しているといってよいので、棋譜並べビギナーにはうってつけの入門書。一冊で50局を集録しているのでそれほど詳解ではないが、高木九段のポイントを押さえた解説は明解である。
category
古典(打碁集)

囲碁トレーニング(全6巻)/日本棋院

囲碁トレーニング(1(入門編))囲碁トレーニング(2(基礎編))囲碁トレーニング(3(初級編))囲碁トレーニング(4(中級編))囲碁トレーニング(5(上級編))囲碁トレーニング(実力テスト編)
入門者 ☆☆☆
日本棋院/

 入門者用のドリルとしてはまぁまぁ。一冊一冊が薄くて気軽に取り組める点と、図が大きくて見やすいのがセールスポイントである。なお各巻の初級、基礎などのレベル表示はあくまでも目安でありあまり気にしないこと。著者が変わると同じ「基礎」でも全然レベルが違ったりすることは、この手の本ではよくあることである。
category
入門

泰然知得/依田紀基

泰然知得   

有段者 ☆☆☆☆
日本棋院/佐野真

 燻し銀の渋さが魅力の安井知得(仙知)の打碁集。地に辛く腰を低く落とし、深い読みに裏打ちされた強靭な中終盤力が魅力である。
 この本はなんといっても依田紀基九段の解説が面白く、是非読んでもらいたい一冊である。打碁集の魅力は棋譜の値打ちと解説の良しあしで決まる。知得の名棋譜と依田九段の解説は最良の組み合わせの一つと言ってよく、シリーズでも最高峰の仕上がりとなっている。依田九段の大局観の明るさは新しい発見をさせてくれて、非常に勉強になる。
category
古典(打碁集)

英傑幻庵因碩/安倍吉輝



有段者 ☆☆☆★
日本棋院/佐藤紘一

 こちらも気がつけば絶版。打碁集は売れないものらしい。
 名人本因坊丈和と名人の座を争った井上因碩(幻庵)は、非常にスケールの大きい棋風が魅力的だ。スケールの大きさが脇の甘さになるケースも多く、丈和・秀和・秀策といった坊門棋士には勝負の面では一歩譲るものの、魅せるという面ではこれほどの棋士はなかなかない。安部九段の解説は素朴で親しみやすい。
category
古典(打碁集)

流水秀栄/高木祥一



高段者 ☆☆☆★
日本棋院/小堀啓爾

 こちらも気がつけば絶版で、古書も結構な値段で取り引きされているようだ。
 明治の棋士本因坊秀栄は、田村保寿(後の本因坊秀哉)以外をすべて先二以上に打ち込んでしまったとてつもない大名人である。大成してからの打碁は白番ばかりで、絶妙な打ち回しを見せた。従って古くから秀栄名人の打碁は白番の模範となってきた。(ちなみに黒番のお手本は秀策)
 古碁に造詣が深い高木九段が選んだ名局、名場面はどれもうなるようなものばかりで非常に面白い。こんな本が売れないのは悲しいことである。

参考:秀栄の打碁集比較
category
古典(打碁集)

張栩/張栩

張栩   

有段者から ☆☆☆★
日本棋院/桑本晋平

 ライターが桑本晋平五段ということもあって、張栩九段の本音が良く反映されており、面白くさわやかな内容となっている。ただし手どころの解説はやや難しく、その部分は読み解くのに多少の棋力がいる。
category
現代(打碁集)

すべての囲碁ファンに捧げる本/田村竜騎兵

すべての囲碁ファンに捧げる本   

すべての囲碁ファン ☆☆☆☆★
毎日コミュニケーションズ/田村竜騎兵

 名観戦記者・故田村竜騎兵氏による上達読本。昔のベストセラーの復刻である。
 本書の魅力は、囲碁とどう付き合うのがよいのかということを15人のトッププロの経験談を含めて紹介されていることである。(もちろん技術的な内容も書かれています)非常に面白い。上達するための知識・情報は氾濫しているが、上達する為のノウハウは案外知られていない。こういうアプローチの本はもっと増えてもよいと思う。
 本書の内容は碁キチのツブヤキで紹介されているのでそちらも参照のこと。
category
読み物/文芸

石田芳夫/石田芳夫

石田芳夫   

上級から ☆☆☆
日本棋院/伊瀬英介

 シリーズ第6巻。このシリーズの特徴については、シリーズ第1巻『片岡聡』でふれているので、そちらを参照のこと。
 コンピューターとよばれて一世を風靡した石田九段だけに細かいヨセの解説にこだわりを感じる。選局は比較的「過去の栄光」からが多い。
category
現代(打碁集)

小林光一囲碁必勝講座/小林光一

小林光一囲碁必勝講座(第1巻)
小林光一囲碁必勝講座(第2巻)
小林光一囲碁必勝講座(第3巻)


有段者~高段者 ☆☆☆☆
日本棋院/中山典之

 これも絶版の名著。小林光一九段が棋聖・名人・碁聖の3冠を保持した全盛期に書き下ろした3部作。力作で内容が濃い。1巻が序盤戦略、2巻が中盤戦、3巻が決定打の打ち方と収束がテーマになっている。3巻がとくに面白い。またそれぞれ巻末におまけとして小林流布石や置碁布石の講座があるが、こちらも面白い。
 光一九段の実戦譜を題材にしており、テーマ図以外の着手についても解説がついているので打碁集としても楽しめる。1巻は院生時代、2巻が低段から台頭期、3巻がトップ棋士になってからの棋譜を扱っている。
category
講座

依田ノート/依田紀基

依田ノート   

上級~有段 ☆☆☆★
講談者/

 有段者の常識的な知識・テクニックがコラム形式で集成されている。かなり大部だが、読みきり記事の連続なので読みやすいだろう。
 私的には評価は低かったのだが、評判はかなりよい。高段者からみると、「誰が書いても同じような常識的なことを書いてある本」という印象が強いが、上級者などから見ると非常に分かりやすい本ということになるらしい。
 ただ似たようなコンセプト・形式の『初級囲碁読本』(石田芳夫・小川誠子)があまり評判になっていないところを見ると、「依田」のネームバリューの大きさを感じずにいられない。『依田ノート』というタイトルはいかにも天才棋士依田紀基の奥義や秘伝でも書いてありそうな印章があり、手にしてみたくなるのだろう。
 もっとも基本的なことこそ奥義なのかもしれず、高段者も馬鹿にせずに読んでみるべきなのかもしれない。
category
講座

武宮正樹自選ベスト30/武宮正樹

武宮正樹自選ベスト30


有段者~高段者 ☆☆☆☆
誠文堂新光社/

 武宮九段の打碁集としては最高のものと思う。宇宙流、自然流を堪能できる。解説はさほど詳細ではないが、ポイントを抑えたもので読みやすい。棋譜も大きく見やすい。 
 現在は品切れで、古書は定価よりも高く売られているケースもあるようだ。
category
現代(打碁集)

趙治勲傑作選/趙治勲

趙治勲傑作選(1)
趙治勲傑作選(2)
趙治勲傑作選(3)


有段者 ☆☆☆☆☆
筑摩書房/小堀啓爾

 現在絶版だが、非常に良い打碁集である。1、2、3という番号の振りからして、続巻を予定していたものと思われるが、売れ行きが悪く頓挫したというところか。
 来日~初の名人~大三冠(1回目)~交通事故~復活、本因坊5連覇という趙治勲の棋士人生の前半が余すところなく描かれている。実質的な著者は名ライター小堀啓爾氏である。小堀氏独自の視点で趙治勲の人生を描くことで、従来の自戦解説的打碁集にはない立体感がある仕上がりとなっている。従って、読み物としても充分楽しめる側面を持っており、割合棋力に関係なく楽しめる傑作である。(趙治勲に興味があれば級位者でも面白く読めるだろう)もちろん大棋士趙治勲の名局がそろっているので、大変勉強になる。
category
現代(打碁集)

囲碁 孫子の兵法/馬暁春

囲碁孫子の兵法

高段者 ☆☆★
誠文堂新光社/

 かつての中国の第一人者馬暁春の著作。孫子の兵法になぞらえて自身の中盤戦略を語っている。
 この本にはカルチャーショックを覚える。普通の棋書では、論理的な最善手を説こうとしている。それは囲碁が、マージャンやポーカー等と違って、完全情報公開されたゲーム(お互いに相手の取りうる手段があらかじめ分かっているゲーム)だからだ。
 しかしここでは、最善手をいかに相手に覚らせないかなどの手段が語られる。必殺の目的の手を、軽い利かしのように装うためにはどんな手順を取ればよいか、などといった策略が滔々と説かれるのだ。こういった態度をとった棋書はあまり知らない。考えてみれば、囲碁は情報が公開されているといっても複雑すぎるので、そういった発想も必要なのかもしれない。
 ともかく、ここに収められた悪辣な策略や鮮やかな戦略の数々は充分楽しめる。ただし複雑な内容のものが多いので高段者向けである。
category
中盤

三段の壁を破る黒番の布石/大竹英雄

三段の壁を破る黒番の布石三段の壁を破る白番の布石
  

有段者 ☆☆☆★
日本文芸社/

 黒番の布石と、白番の布石の姉妹編。現在は絶版のようだ。
 黒番なら地で先行する布石から戦いの布石、さらに三連星、二連星、中国流のようなシステム布石までを網羅。白番はそういったシステム布石対策や白番の要諦を解説している。高校時代に非常に勉強して役に立った本で、今にして思えば大竹九段の名局が題材になっている。
 布石は(特に白番)相手のあることでいつも思い通りの展開にならない。地で先行しようと思っていたらそうならなかったり、模様の碁は嫌いなのにそうせざるを得なくなったり。布石上手というのはいろいろな展開に対応できる懐の深さがあるものなのだ。この上下2冊は広く浅くではあるが、一通りのパターンを網羅しているので心強い。解説はシンプルなのがむしろちょうどよい。
category
布石

林海峰/林海峰

林海峰   

上級者 ☆☆☆
日本棋院/相場一宏

シリーズ第4巻。このシリーズの特徴については、シリーズ第1巻『片岡聡』でふれているので、そちらを参照のこと。
 林海峰ほどの大物となると、こういうシリーズで扱うのは難しい。(取り上げるべき名局が多すぎる)この本には、1局を除いてすべてが最近の対局を題材にしている。そのどれもが「林海峰」らしい柔軟で粘り強いものばかり。巨匠の作品は、大勝負でなくとも名品が多いのだ。
category
現代(打碁集)

常識破壊/宮沢吾朗

常識破壊   

高段者 ☆☆☆★
毎日コミュニケーションズ/伊瀬英介

 天才棋士宮沢吾朗九段の快著。
 この本では普通は悪い(常識はずれ)といわれている打ち方でも工夫次第では打てるということが説かれている。定石通などとよばれる勉強家の人はかなり違和感を覚えるかもしれない。しかし、読み進めれば分かることだが、囲碁とは基本的に「前に置いた石を活かして打つ」ということの繰り返しで、スタートこそ常識はずれでも、その後の一手一手は非常に常識的に考えて打たれていることが分かる。むしろ定石を丸暗記して考えずに石を並べているだけの人の方が非常識なのかもしれない。
 囲碁を打つということの本質を考えさせられる一冊。自分の考え方に幅を持たせたい人にお薦め。
category
中盤

工藤紀夫/工藤紀夫

工藤紀夫   

上級者 ☆☆☆
日本棋院/相場一宏


 シリーズ第3冊。このシリーズの特徴については、シリーズ第1巻『片岡聡』でふれているので、そちらを参照のこと。
 ベテラン工藤九段の老練な技を鑑賞できる。厚みを主体にするが、そのパワーをじっくりと使うのがベテランの技である。もっとも少年時代は坂田名人に「そんなに喧嘩ばかりしていては・・・」とたしなめられたほどの豪腕だったので、いまだに随所でその片鱗は見せる。豪腕を隠すのも芸。
category
昭和(打碁集)

はじめての基本定石/小林覚

はじめての基本定石   

級位者~有段 ☆☆☆★
棋苑図書/

 簡単な基本定石集。
 この本を薦めるポイントは、まず重要と思われる基本定石がコンパクトにまとまっており、値段が手ごろで、それでいて事典としての機能がしっかりしている、といったところだ。19路盤で打ち始めた初心者(特に互先対局の機会が増えてきたとき)はこれを買っておくと助けられることが多いだろう。
 定石の本を選ぶポイントを一つ。それは索引の有無。定石書は端から端まで読んで勉強するものよいが、実戦ででてきたら調べて勉強するというほうが実践的である。そのときに索引があるかどうかが大変な違いとなってくる。
category
定石

打っていい場所・悪い場所/苑田勇一

苑田勇一の打っていい場所・悪い場所   

有段者 ☆☆☆★
NHK出版/内藤由起子

 苑田九段らしい斬新な切り口と、明快な解説で楽しめる囲碁読本。
 囲碁は非常に手が広い場面が多い。アマチュアがよく勘違いしてしてるのは、「囲碁には常に絶対的な良い手が存在する」という思い込みだ。そういう思い込みがあると、〇〇先生の本ではコゲイマが良いと書いてあったのに、◇◇先生の本では一間が良いと書いてあった、どっちが正しいの?なんていう悩みが生じたりする。
 もちろん死活やヨセなどでは「良い手」が特定できる場面が多いが、人知では到達できない場合が多い。むしろ「これはありえない手」とか「この手はありうる」という大まかな善悪の判断ができることが重要なのだ。プロや高段のアマチュアが検討で「これで一局」というよな言い方をしているのを耳にしたことがあるだろう。それは「絶対の真理ではないが、大筋は外れていない」という判断に支えられている。プロが一手30秒でもレベルの高い棋譜を残せるのもこういう判断力のためだ。(このことについては王銘エン九段の近著『読みの地平線』の書評でも触れるつもり)
 この著作で苑田九段は、「石数」や「形」から打っていい場所悪い場所の「判断」の仕方を教えてくれる。この教え方は、「こう打たねばならない」という思い込みから脱出させて、「どう判断して打とうか」と考えさせてくれるだけでもとても有益だ。
category
中盤

私の布石構想/依田紀基

私(わたし)の布石構想   

有段者 ☆☆☆☆★
誠文堂新光社/大島正雄

 依田九段の著作では(今のところ)最高傑作と思う。
 依田九段は、どちらかといえば足早な実利派に分類されるが、本質的にはバランス感覚と大局観が優れた厚い碁である。捨石の名手として知られるが、それは明るい大局観があってこそのものである。
 この本は、依田九段の実戦棋譜を題材にその布石構想を解説したものである。この形をどう判断するか、その局面で何を重視しているのか。その碁を見る目の明るさには脱帽する。
category
布石

基本戦略/苑田勇一

苑田勇一流基本戦略   

有段者 ☆☆☆★
NHK出版/内藤由起子

 「生きている石の近くは小さい」「攻めず守らず」「サバキはナナメ」など苑田理論の根幹となるキーワードがまとめられた好著。苑田流を極めようという人は、まずはこの本から読むのがよいと思う。
 その理論の明快さはもちろん、分かりやすく印象に残る言葉の使い方には敬服する。また参考図の鮮やかさも必見。
 
category
中盤

大模様はこうして勝て/苑田勇一

苑田勇一の大模様はこうして勝て   

有段者 ☆☆☆☆★
誠文堂新光社/浅江季孝

 現在次々と著作を発表し人気を博している苑田九段の処女作。
 「西の宇宙流」の異名をとる苑田九段には豪快なイメージが付きまとう。またこの本のテーマである「大模様」も同断である。
 しかし、苑田九段が一貫して説くところは「石の効率」の追求であり、大模様もその追求の果てにあるものだということが分かる。またその「大模様で勝つ」方法も、特別な方法(大石撲殺など)ではなく石の効率を追求してゆくことにあることが分かる。豪快なイメージの裏にある繊細で明るい苑田流の感性に目からうろこという感じ。
 この本は処女作ということもあってセンセーションを狙っている意味もあり、「生きている石の近くは小さい」などの苑田流の基本的な考え方については『基本戦略』のほうが巧くまとまっているかもしれない。
 
category
中盤

小林覚/小林覚

小林覚   

上級者~高段者 ☆☆☆
日本棋院/伊瀬英介

 このシリーズの特徴については、シリーズ第1巻『片岡聡』でふれているので、そちらを参照のこと。

 小林覚九段は若い頃『明るい碁』と称されたように、筋と対局に明るい本格派として知られる。趙治勲との3年連続の棋聖戦7番勝負を経て、碁がより厳しく変化した。この本ではその棋聖戦のころからの棋譜を取り上げている。若い頃の棋譜に比べて激しい内容のものが多い。
 地に辛い、激しいといっても覚九段はやはり覚九段であって、独自のセンスのよい着想や、明るい判断を見せてくれる。なので激しいといっても泥沼の激戦にはならない。形がきれいなので、上級者でも並べやすい棋譜であると思う。
category
現代(打碁集)

片岡聡/片岡聡

片岡聡   

上級者~高段者 ☆☆☆
日本棋院/相場一宏

 日本棋院が出している文庫版の簡易打碁集シリーズ。打碁集の出版が停滞する中、こういう本で打碁集が増えてくれればと願う。
 まずはシリーズ共通の特徴を。1冊には数局の棋譜が収められ、詳細に自戦解説されている。そのほか参考譜や識者によるあとがきなど、各巻に工夫があり面白い。1譜あたりの手数はかなり少ないので、誠文堂の「名局細解」シリーズと同様大変見やすい。(文庫版なので参考図と本譜が別ページになってしまうのが難点かもしれない)文庫版なので値段も手ごろ。あとは興味のある棋士をチョイスして棋譜鑑賞を楽むべし。

 片岡聡九段は、どちらかというと実利派ではあるが極端な稼ぎ方はせずにバランスを重視した手厚い打ち方をする。中盤でもそつのないテクニックと大局観で巧みにリードを奪うレース巧者であり、終盤は非常に精密である。一言で言うとバランスが取れていて欠点がない棋士で、お手本には最適である。(このことは後書きで小林覚九段も指摘している)
category
現代(打碁集)

囲碁界の真相/石田章

囲碁界の真相   

 誰でも ☆☆☆★
河出書房新社

 囲碁を始めたばかりの人は分からないだろうが、日本の囲碁のプロ組織日本棋院はかなりの問題を抱えている。財政問題、囲碁普及に対する意識の低さや、プロ棋士育成の遅れ。(すべては絡み合っている)しかしこういったことは一般のファンにはあまり伝わらない。それもそのはずで、ファンに届く囲碁情報の大部分が日本棋院の機関紙によるものでいわば「大本営発表」にすぎないからだ。(この意味で囲碁界にジャーナリズムはない)
 この本は蓋をしていた臭いことの(匂いが薄いところを)ぶちまけた本である。自分の周辺に棋院職員やプロ棋士がいる人にとっては目新しくもないが、普通のファンは衝撃を受けると思う。真実はもっとひどかったりするのだが・・・
category
読み物/文芸

勝負師の妻/藤沢モト

勝負師の妻   

誰でも ☆☆☆★

 知っている人は知っている、秀行先生の御乱行のすべてがここに。著者は秀行先生の正妻。
 秀行先生の行状の予備知識あってもかなり驚く部分があるので、知らない人には衝撃だろう。あまりほめられたものではない。
 個人的に秀行先生のこういった面は非常に軽蔑しているのだが、反面これだけやっても人から見放されない秀行という人の大きさを感じる。(この本に限らず)直接迷惑をかけられた人々が口をそろえて言うのは「碁に対する姿勢はものすごい」ということ。その点だけは認めざるを得ないよう。天才のありようとはそういうものなのだろうか。
category
読み物/文芸