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勝ち切る頭脳/井山裕太



囲碁ファン ☆☆☆★
幻冬舎

 今更ながら読んでみた。

 「打ちたい手を打つ」という勝負哲学に関する記述が一番興味深いが、本人の内面と外からウォッチしている他人とでは印象がずいぶんと違うところがある。
 本人の述べるところでは、名人初挑戦で感じた限界から「打ちたい手を打つ」意識を強く持ち、自分の碁が変わっていったのだろう。ただ傍観者の見た目には翌年の名人戦の戦いぶりは、(たくましく、強くはなったが)そこまで根本的な変化があったようには思えなかった。本書でも述べられているように、2011年の棋聖戦(張栩棋聖に挑戦失敗)で「打ちたい手を打つ」方針の悪い面(リスク)が出てしまったわけだが、私が井山裕太の碁が変わったと感じたのはむしろこの前後からだった。だから「打ちたい手を打つ」という哲学も、張栩に勝つためというよりも国際棋戦で結果を出すための意識改革なのだろうと解釈していたが、本人の中ではずっと以前からの取り組みだったのだ。
 その辺りの内幕がわかって面白かった。
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読み物/文芸

すべての囲碁ファンにささげる究極の上達法/田村竜騎兵編



囲碁ファン ☆☆☆☆
マイナビ 田村竜騎兵

 これはすでに『すべての囲碁ファンにささげる本』として一度復刊されており、内容はそちらを参照のこと。今回は活字が大きく見やすくなり、値段もバージョンアップした。
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読み物/文芸

院生時代の思い出話/橘諒



☆☆☆☆

 このタイトルだと筆者の上達サクセスストーリーや院生時代の苦闘の記録、挫折の物語、などを期待してしまうが、あまりそういう類の本ではない。著者の囲碁観や、囲碁を通して得たさまざまな洞察が話題の中心。このミスリードは確信犯なのか?以前ブログで公開していた記事がまとめて電子書籍になった。
 囲碁を趣味にできた人なら必ず実感できることだが、囲碁はひとに物事(の本質まで)を考えさせる作用があり、単なる遊戯という枠を超えた存在になりやすい。にそうした囲碁の可能性とその魅力を語った好著。
 
現在橘さんは『WinGO~あなたの知性に翼を装着』というブログを更新しており、こちらも注目。
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読み物/文芸

囲碁上達のための18のアイデア 両刃の対局心得/吉崎久博

  

 吉崎さんは早稲田大学囲碁会の大先輩でトップアマ。 2冊別々に記事にしようかとも思いましたが、あえてまとめてとりあげる。
 
 まず両書に共通するのは、箇条書き形式で、一つ一つの項目も非常に簡潔な文章にまとめられている点。簡潔なだけにその余白で考えさせられる。

  『囲碁上達のための18のアイデア』は、対局から棋譜付け、詰碁、棋譜並べ、大会、研究会などありとあらゆる上達法に関しての心得を網羅している。特別新しいアイデアがあるといよりも、ひとつひとつの方法を行う上での要点をはっきりさせている。自分なりに努力しているつもりだが伸び悩んでいる。そんな人には特に気づきの多い一冊になるのではないだろうか。

 『両刃の対局心得』も同じような内容を多く含むが、より競技者向け(手合時計などを使う大会に参加しているレベル)に整理されている。「両刃の」とあるとおり、ものごとにはよい面悪い面がある。(囲碁そのものそうだろう)正解はないが、その両面性をしっかりわきまえるというのが著者の基本的な姿勢である。

 自分も囲碁を始めて20年以上になるが、強い人の話を聞くのが好きである。上達する人はやはり囲碁に対して非常に熱意があり、それに裏付けられた行動(努力)をしているものだ。上手の話を聞いていると、なるほどと思ったり、さすがと感心させられることが必ず出てくる。そうしたことを真似る(学ぶ)ことも上達法だし、実践できなくてもそういった話から受ける刺激は自分の意欲向上させることが多い。本書にもよい刺激になった。
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読み物/文芸

落日の譜/団鬼六



筑摩書房 ☆☆☆☆

 熱心な将棋ファンとして知られる小説家・団鬼六の絶筆となった囲碁棋士雁金準一の評伝小説。

 自身と囲碁、それも雁金という棋士との接点の回想から始まり、維新期の囲碁界から物語を始めている。資料としては「坐隠談叢」の他、秀哉や雁金の回想録を用いているようだ。秀甫の方円者と坊門の対立、高田民子の囲碁界後援とその終焉、秀栄と秀哉(田村保寿)の不和など、囲碁史ではよく語られるところだが、小説だけあってそこに具体的な描写が肉付けされいきいきと描かれている。個人的には世評ほど秀哉を悪くは思わないのだが、この小説を読むと確かに憎たらしく思える。

 小説は完結しておらず裨聖会設立までしか描かれていない。ここから関東大震災を契機として囲碁界は再編され日本棋院が成立する。日本棋院に合流することを良しとしなかった雁金らは棋正社を結成し、有名な院社対抗戦へと進んでいく。まさにここからがクライマックスというところで筆が絶たれたのは残念というしかない。
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読み物/文芸