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呉清源とその兄弟/桐山 桂一



岩波書店
すべての人 ☆☆☆☆

 現在も活発に囲碁を研究を続けていて、一応われわれと同時代人といえる呉清源であるが、その人生は20世紀の日本と中国の狭間で揺れ動く波乱万丈なものだった。この本では、呉清源と二人の兄の生き方を通して20世紀初頭の中国と日本を描き出している。この本を読むと。呉清源という存在が一棋士という存在を超えて日中関係を象徴するものだったことがよくわかる。また、囲碁ファンだとどうしても呉清源に興味が向くが、他の二人の人生も数奇なもので非常に面白い。
 
 呉清源に限って言えば、その才能を見出して育てた日本の功績は大きいが、その反面呉師を「支那人」と差別し阻害してきた面も少なくない。呉師には、十番碁で満天を向先相先に打ち込んだ孤高の勝負師というイメージがるが、それも二つの国の狭間で生きた結果ともとれる。
 打ち込み十番碁は棋士の序列をはっきりさせる非常に厳しいシステムであったが、強い棋士であることで身分を保証されていた呉清源にとっては、負けることは自分の存在意義さえ揺るがしかねないものであった。国の狭間でさまざまな重荷を背負って勝ち続けた呉師の偉大さを改めて知ることができる。

 いずれにせよ興味深い事実を多く掘り起こしているので是非一読されることをお薦めする。
 
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読み物/文芸